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そう遠くない時期に、ネットトレーダーが職業として認知され、「和製パフェット」や「和製ソース」と呼ばれるカリスマ相場師が、日本の個人投資家の中から誕生するかもしれない。
2001年8月某日、ある株式情報誌の取材で、億単位の資金を運用している二人の個人投資家を取材したことがある。
一人は、職業を転々とし、株式投資を始めるまでは、月々の生活費を稼ぐのがやっとだったいう元タクシー運転手。
もう一人は、若くしてベンチャー企業の役員を務めていたMBAを取得しているエリート。
元タクシー運転手のSさんは、100万円から株式投資を始め、株式市場で言われるところのボロ株(額面割れの超低位株)の大株主の保有状況をチェックしながら、仕手化しそうな銘柄を選んで回転売買。
100万円を300万円、300万円を900万円、9100万円を1億5000万円にしている。
「運がよかっただけ」と本人は謙遜するが、仕手筋介入観測といった市場の噂でボロ株に飛び付いたわけではない。
財務局に足しげく通って、大株主の保有状況を調べあげていたからこそ、わずか1年半で元手を150倍にできたのであろう。
額面10円割れで株価が推移している銘柄は、信用リスクを覚悟しなければならない。
Sさんは、で上昇を待つのではなく、数日単位で繰り返し、つねにキャッシュポジション10%をキープして、信用リスクを回避していた。
掴まるでゲームのような売買で5000万円が6億円にベンチャー企業の役員を務めていたTさんは、元手5000万円で株式投資を始めた。
最初はゲーム感覚で楽しんでいたが、生来の負けず嫌いな性格から、勝つためにはどうすればいいかを自分なりに考えた結果、「割安な銘柄を拾って、割高な銘柄を売る」という株式投資のセオリーをヒントに、前日の下落率上位の銘柄には買い、上昇率上位の銘柄に空たとえば、1月22日の寄付きで左のグレ一部分の銘柄に成り行き買い注文たとえば、1月22日の寄付きで左のグレ一部分の銘柄に成り行き売り注文(2位、8位、10位は貸借銘柄でないので売りの対象にならない)売りというデイトレードを始めた。
前日の下落率上位1、3、5、7、9位の銘柄に寄付き成り行き買い、前日の上昇率上位2、4、6、8、10位の銘柄が空売りのできる貸借銘柄だったら成り行き売り。
まさにゲーム感覚としか表現のしょうがないが、この投資手法を不具合が出るつど修整しながら、前場の寄付き、後場の寄付きでポジションを取り、前引けまたは大引けまでに手仕舞う独自のデイトレードを編み出し、3年間で元手5000万円を6億円に殖やしている。
Tさんの売買は、現金を担保にした信用取引である。
信用取引は、取ったポジションと逆の方向に株価が動いたケースでは、大きな損失を被ることになる。
そのため、証券会社が信用取引のハードルを高くしていたことから、以前はごくごく限られた投資家の取引だった。
ネット専業証券が信用取引のハードルを低くしたことで、現在ではネットトレーダーと呼ばれる回転売買を効かせて値幅取りを狙う個人投資家の間では、一般的に利用されている。
大引けには、原則としてすべて手仕舞うというルールによって、Tさんは、株価の乱高下のリスクを回避。
取引しているネット専業証券の、自己の投資状況がわかるべージに掲載されている「信用取引の保証金の現金」欄の数字が、日々増えていくことを楽しみにしている。
ITバブル相場に上手く乗って、ぼろ儲けした個人投資家は少なくない。
ITバブル崩壊で元も子もなくしてしまった個人投資家もいる。
資金とリスクの管理に問題があったからである。
Sさん、Tさんとも、取材した当時とは投資スタイルを大きく変えているが、いまなお「勝ち続ける個人投資家」であり続けている。
投資スタイルを変更した理由は、儲け過ぎてしまったために、マーケットの器(市場規模)に対して、自己のポジションが大きくなり過ぎてしまい、個別銘柄を対象にした同じような投資手法を続けられなくなったからである。
喰えるなら、池で自由に泳いでいた鯉がいつの間にか成長して鯨になったため、ちょっと動くと、池の水が溢れてしまう。
そういうことになるだろう。
SさんやTさんのような事例は特別。
当初はそう考えていたのだが、個人投資家への取材を続けるうちに、投資スタイルこそ違え、同じように勝ち続けている個人投資家が、一人、二人、三人・・・、八人、九人、十人・・・と続々現われ、かなりの数にのぼることがわかった。
証券界では、いまだに個人投資家を「個人さん」と呼ぶ業界人がいる。
機関投資家を「機関さん」、外国人投資家を「外国さん」などと呼んでいるならまだわかるが、個人投資家だけを「個人さん」と特別に呼ぶ背景には、個人投資家を素人として見下している感覚が透けて見える。
ネットトレーダーの回転売買を快く思っていない証券会社、新聞社があるが、「和製パフェット」や「和製ソース」と呼ばれるレベルに近いネットトレーダーは確実に増えている。
経営破綻したAフィナンシャルグループ(FG)株で大儲けした元大手銀行員が、名古屋のテレビ塔から1ドル紙幣をばらまいたというニュースが、2003年6月のクリスマスに報じられた。
地場証券の契約ディーラーが、このマネーゲームの仕掛け人と言われているが、1円のAFGを5円で売り、6円で買い直して10円で売り抜ける、といったマネーゲームに100万円単位の売買で参戦し、100万円を1000万円にした個人投資家が何人もいると聞いた。
「質の悪い売買」と、業界関係者は一様に眉をひそめるが、株価が動くきっかけさえあれば、どんな銘柄でも陸上競技の400mリレーのような感覚で、地場証券の契約ディーラーやネットトレーダーが、バトンを渡しながら株価を吊り上げているのが現実である。
信用取引の委託保証金率の増し担保規制の臨時措置が、東京証券取引所によって解除されると、それを好感した買いが入り、株価が急伸することがしばしばある。
2004年1月に、増し担保規制の臨時措置が解除されたルックが、連続ストップ高を演じている。
これは介入が噂されていた投資グループの買いではなく、証券会社のディーラー、ネットトレーダーの買いによってもたらされたものである。
いまだに「個人さん」と呼んでいるような業界人には、信じられないかもしれないが、いまやネットトレーダーはそれくらいの力を付けているのである。
証券会社のディーラーをきりきり舞いさせるネットトレーダーがいる一方で、「高値を掴んでは、安値で投げてしまう。
損切りは遅いのに、買いを入れて上昇するとすぐに売ってしまう」旧態依然の負け癖がしみついた個人投資家もまだまだ少なくない。
個人投資家は、もっともっと株式投資を勉強し、機関投資家と渡り合えるような実力を身に付ける必要がある。
フリーのライターとして、手掛けてきた個人投資家への取材を元に、取材対象者の了承を得て、勝ち続けてきた株式投資戦術を今回、一冊の本にまとめた。
ネット専業証券の登場によって、株式投資はより身近なものになっている。
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